美しく死なせてください
「グレイソン、今日はあの子の世話をする日だ」

警棒を腰にさし、スタンガンの用意をしていたグレイソンに上司が話しかける。この刑務所には普通の刑務所にはない仕事があるのだ。

「あの子の様子は?何か変わったことは?」

「いや、いつも通りだよ。早く自由にしてやりたいんだがねぇ〜」

上司はそう言ってコーヒーを飲み始める。その手に持っている新聞には、平和式典を記念したパーティーが行われた様子が載せられていた。

この国は戦勝国。誰もが笑い、平和になったことを喜んでいる。その笑顔を見てグレイソンは胸を痛めた。

新聞の中で笑っている人たちは、この刑務所に閉じ込められている少女のことを誰も知らない。本来ならば彼女もそこで喜ぶべきなのだ。

グレイソンは少女のいる独房へと向かう。檻の中には多くの囚人がいて、道を歩くグレイソンを睨み付けていた。

囚人を捕らえている檻は、看守が中の様子を見れるように格子があるだけだ。しかし、模範囚の独房には扉があり、中の様子は外からはわからないようになっている。
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