美しく死なせてください
グレイソンは迷うことなくある独房の前で止まる。そして、コンコンとドアをノックした。

「ブランドン、交代の時間だ」

少女の世話をする係になっている同僚に外から声をかけると、「わかった」と同僚は返事をして少女に何か言って出てきた。その顔はどこか疲れ切っている。

「お疲れ様」

グレイソンが言うと、ブランドンは「ありがとう」と無理に笑った。ブランドンが疲れ切るのもわかる。グレイソンは独房の中に入った。

独房はそれほど広いわけではない。小さなベッドとトイレがあり、囚人が届かない高さの場所に一つだけ窓がある。ここまでは普通の独房だ。

その狭い檻の中には、ぬいぐるみや本が置かれている。普通の囚人とは違う待遇だ。

「……誰?」

ベッドに一人の少女が腰掛けていた。腰ほどの長さのある黒髪に、灰色の目をしている。街に出れば美人と言われるだろう。

しかし、その少女の手足には重い鎖がつながれている。首にも頑丈な首輪が巻きついていた。グレイソンはその姿を見るたびに、胸が苦しくなっていく。
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