美しく死なせてください
「グレイソン・ハーパーだよ。前に来たのは二週間前だったかな?元気にしてたかい?マチルダ」

グレイソンは微笑み、マチルダの隣に腰掛ける。マチルダに囚人番号はない。グレイソンたちは囚人として彼女と接してはいないからだ。

彼女は、洗脳されて多くの人を殺めた。彼女は被害者なのだからーーー。



マチルダがサーベラス刑務所にやって来たのは、グレイソンが刑務所で働き始めた二十歳の頃だった。

グレイソンが十八歳の頃に戦争が終わったとはいえ、まだ小さな争いごとは起きていた頃。上司が看守たちを集めてこう言ったのだ。

「本日より、このサーベラス刑務所で新しい仕事を行うことになった」

その言葉にはグレイソンたちは驚くことはなかった。囚人の更生のための新しいプログラムだと思っていたからだ。

しかし、上司が次に言ったことにグレイソンたちは驚くことになる。

「隣国で保護された少女兵の洗脳を解くことが仕事だ」

看守たちはざわめく。上司が丁寧に説明した。
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