美しく死なせてください
初めて少女を目にした時、グレイソンは言葉を失ってしまった。

少女は眠らされ、担架の上に寝かされていた。しかし、その口には布を噛まされ、体は暴れることができないように縛り付けられている。

「暴れたので眠らせました。舌を噛み切ろうとするので、しばらく布は外さないほうがいいかと……」

疲れ切ったように隣国の医師が言った。

グレイソンたちは少女を慎重に独房へと運び、鎖でつなぐ。そして厳重にドアに鍵がかけられた。

少女はマチルダと名付けられ、洗脳を解く日々が始まったのだが、刑務所に来たばかりの頃は大変だった。

逃げ出そうと暴れたり、隙を見て看守から武器を奪おうとする。食事や水を取ろうとせず、眠ることもしなかった。

しかし、グレイソンたちは諦めることなくマチルダと接した。字の読み書きや計算を教え、ぬいぐるみや本を与えた。おかげで、マチルダは少しだけ洗脳が解けたような気がする。

檻の外に出せないため、新聞で世間のことを教えたりもした。マチルダから鎖を外すのはまだまだ先の話だ。
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