美しく死なせてください
洗脳が解けていくたびに、マチルダの心のある感情にグレイソンたちは気付いている。それがあるからこそ鎖を外せないのだ。



「マチルダ、またご飯を食べないのか?」

枕元に置かれたテーブルには、女性看守が作ったご飯が置かれている。幼い頃に誘拐されたマチルダは、母親という存在を知らない。母親や家族を教えるため、手作りの食事が与えられるのだ。

グレイソンが訊ねると、マチルダはコクリと頷き目をそらす。ジャラリと鎖が音を立てた。

この刑務所に来た頃マチルダがご飯を食べなかったのは、毒が入っているかもしれないという兵士として当たり前の心配からだった。しかし、今は違う。

「毒を入れてくれるなら食べる」

そう言うマチルダの声は、どこか元気がない。もう三日もご飯を食べていないからだ。

「マチルダ」

グレイソンは水をマチルダの口もとに持っていく。マチルダは唇に水を当てられても飲もうとしない。

「飲むんだ、マチルダ」

優しくグレイソンは言う。マチルダは少し水を口にしてくれた。グレイソンはパンを小さくちぎる。
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