美しく死なせてください
「マチルダ、食べるんだ」

パンを口もとに持っていくと、マチルダは迷いながらも口を開ける。グレイソンはそっとマチルダの頭を撫で、次はスクランブルエッグを食べさせ始めた。

マチルダは「人を殺せ」という洗脳が解けていくたびに、自分のしてしまったことに苦しんでいく。あどけない少女のフリをして、何百人もの人の命を奪ってきたのだ。その罪の重さは計り知れない。

そのたびに死のうとするため、鎖を外せなくなった。一度舌を噛み切ろうとしたため、ベッドに厳重に縛り付けなければならなくなったほど、マチルダは思いつめている。

グレイソンはマチルダに何度も「生きろ」と言い、優しく触れる。もう出会って二年も経っているのだから、マチルダは十四歳になっている。これから楽しいことがたくさん待っているのだ。

食事を食べさせた後、グレイソンは「新しい本を持ってきた」と言いマチルダに渡した。不思議の国に迷い込む女の子のお話だ。
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