美しく死なせてください
「ありがとう、ございます……」

マチルダはそう言い受け取ったものの、鎖のせいでページをうまくめくれない。自殺しようとするため、鎖の長さを短くしたのだ。マチルダは、トイレにさえ行くことができない。

「俺が読んでやろう」

グレイソンが本を取り、ページをめくる。そして時々休みながら最後まで読んだ。

マチルダの世話をする係になると、一日中マチルダのそばにいなければならない。できることは限られている。

マチルダは、グレイソンの読み聞かせを熱心に聞いていた。そして、終わった後に呟く。

「女王様は私にそっくり。私も多くの人を簡単に殺してきたから」

悲しげなマチルダの顔を見て、グレイソンはしまったと心の中で呟く。マチルダに読ませる本はチェックされる。この本は許可されたもののため、安心していたのだ。

「いや、マチルダは……」

「ねえ、知ってる?」

言葉につまるグレイソンに、マチルダが目を輝かせながら言った。

「クレオパトラっていう女王様はね、美しく死ぬ研究をしてたんだって。毒蛇を死刑囚に噛ませて毒の実験をしていたんだって」
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