始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から
レイヤーカットは、全体的に軽めでナチュラルな雰囲気に仕上がる。


私に似合うのかな…


可愛らしい女の子しか似合わないんじゃ…


でも、思いがけないチャンスに、カットのやり方を全部学びたくて、私はずっと先輩のハサミと指の使い方を見ていた。


嘘みたいに、指づかいが滑らか…


ハサミの動きも無駄が無くて、迷いも無い。


時々、私の顔を鏡を通して見て確認しながら、バランスを調整していく。


その間の会話は無い。


それで良かった。


まだまだ会話なんて、無理だから…


そして…


カットが終わった。


シャンプー台で流し、ドライヤーで乾かす作業。


淡々と行われていく…


こんな素敵な人に、最高の技術で、カットしてもらえるなんて、本当に夢みたい。


たった2人だけの空間。


ぜいたくで、幸せ過ぎるよ…


全てが終わって…


先輩が私を鏡越しじゃなく、ちゃんと向き合ってから、言ってくれた。
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