始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から
『うわぁ、すごい。夕陽がもうすぐ沈みそう』


手すりの向こうに広がる壮大な海、それをオレンジに照らす夕陽。


プラネタリウムの感動を引きずりながら、さらにまた深く心を揺さぶられた。


この景色は、絶対に、忘れない。


心の奥に焼き付けるように、私は、目の前の叙景をじっと見つめた。


『穂乃果…大好きだよ』


海を見ながら言ってくれた、その短い一言が、私の心を温かくした。


『またこの景色、2人で見に来よう。毎年、毎年、必ず…いつまでも』


悠人は、私を見て微笑んでくれた。


『…うん、そうだね…』


手をつないだまま、その美し過ぎるオレンジと黒の情景を前にして、私達は、しばらく動けなかった。


夕陽が…


地平線に沈み切る、その時まで…


ずっと、ずっと…


そして…辺りは暗くなり、夜がやって来た。


2人だけの時間は、これでおしまい。


可愛いアンナが待ってるから、もう、帰ろう。


悠人が、私の背中に優しく手を当ててくれ、私達は、ゆっくりと歩き出した。
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