始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から
『困らせるなんて…そんなこと思ってないよ。本当に嬉しい…ありがとう。今は、一生懸命仕事頑張るね。輝くんも、一緒に…頑張ろ。ごめん、今はそんなことくらいしか…言ってあげられない…』


輝くんは、何度も首を横に振った。


『大丈夫です…本当にすみません。じゃあ、僕、行きます…また、明日』


そう言って、輝くんは、駆け足で私から離れて行った。


私は、複雑な気持ちでマンションに戻った。


今日は、遅くなるって言ってたのに、悠人は、もう帰っているみたいだった。


私が開けたドアの音に気づき、悠人が自分の部屋から出て来てくれた。


『穂乃果、おかえり、お疲れ様』


『…あ、お疲れ様。今日は早かったんだね』


『急に、仕事が延期になった。本当は、まだやることがあったけど、穂乃果に早く会いたくて』


悠人は、私に近づいた。


目の前まで来た悠人を、私は、ゆっくりと見上げた。


『何かあった?』


『え?どうして?』


『ソワソワしてる』


『…して…ないよ、別に』


嘘つくの、本当に下手だ。
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