始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から
『早く穂乃果に会いたいって、変な胸騒ぎがした』


『…』


『店で嫌なことあった?』


『ううん』


今日の悠人は、私の答えをすごく欲しがった。


偽りじゃなく、本当の答えを。


『…ごめん。悠人にわざわざ言わなくてもいいのかな…って…ちょっと思ってたけど』


『それでも知りたい。穂乃果のことなら全部』


悠人は、私の手を優しく引いて、リビングのソファに連れて行ってくれた。


そして、ゆっくりそこに腰掛けた。


『…話して』


悠人にこんな風に見つめられたら、全部話したくなる。


キリッとした瞳の奥に、私が映る。


恥ずかしい…


『…今日の帰り道、本屋さんの前で、輝くんに会ったの。本当に偶然に』


『…ああ』


そっと、相槌を打ってくれる悠人。


『輝くんに…食事に行きませんかって…誘われて…』


『…』


『私、行けないって言ったら…輝くん、10分だけ時間欲しいって言ってくれて』
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