始まりはクールな御曹司とのとろける様な一夜から
『…愛してるって…そんな大切な言葉、簡単に言ったら…ダメだよ』


『…穂乃果…』


『?』


『穂乃果には、俺が簡単に言ったように見えるの?』


『…え…あ…』


戸惑う私。


そんな私の手をつかんで、悠人は…


『手を広げて…』


『手を?』


『いいから、広げて』


私は、うなづきながら、言われるままにした。


この手、どうするの?


『ここ、聞こえる?俺の心臓の音…』


悠人は、自分の胸の真ん中辺りに、私の手のひらを押し当てた。


ドクンドクンって…


ああ…


悠人の鼓動、すごく早い。


悠人も…ドキドキしてくれてるんだ。


嬉しい…


同じように、私も自分の胸の音を感じたくて、反対の手のひらを心臓に当てた。


うん、一緒だ…


同じ速さで脈打つ鼓動に、なぜか、幸せを感じた。


このまま…愛してるって…言ってしまいたい。


悠人が私を裏切るとか、有り得ない気がしてるのに…


なのに、まだ、何を恐れてるの?
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