極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「掃除ありがとう。自分で掃除する気にはなれなかったから助かった。やっぱり空気が違うな」
「い、いえ。家政婦ですから、お掃除するのが私のお仕事ですし…」
思わぬ褒め言葉に恐縮してしまう。
穏やかな表情の流星さんに嬉しくて頬が緩んだ。

「その家政婦だが、今日で辞めてもらう」
「…え……」
一変して硬直した。やっぱり私を側に置いとけないということなのだろうか。
流星さんは一瞬逡巡したように目を逸す。
「…昨夜の件、こうなった以上雇い主と家政婦の関係ではいられない…」
鼻がツンとなって咄嗟に唇を噛んで涙が出るのを堪えた。流星さんから聞くその言葉はナイフのように私の胸を突き刺してくる。
「代わりにこれに署名してもらう」
淡々と話す流星さんを見るのも辛い。俯いてぎゅっと持ってたバックを抱きしめた。

このまま家政婦を辞めてもいいの?
流星さんの側にいられなくていいの?
心の声が私に問い掛ける。
実際に流星さんの口から、私達の関係が終わりだと告げられる事がこんなに辛いなんて…。
まるで身体がバラバラにされたように痛くて苦しくて息も出来ない。
俯く先に何かの書類が差し出されたとき、堪えきれなくて勢いよく立ち上がった。

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