極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「あの…大和さんに買ってもらったのはいけなかったですか?」
「…いや、そんなことはない。かんざしも用意すればよかったな。すまなかった」
「いっいえっ!そんなことは全然!」
謝られてびっくりする。流星さんが持ってきてくれた着物一式にはバックや草履もあったけどかんざしは入ってなかった。でも必ず必要なものでもないしそんなことまで気にしてもらうのは申し訳ない。「今度用意しよう」なんて言うから「大丈夫ですから!」と必死にお断りした。なのに流星さんは私のおでこをツンと突き「大和のかんざしは喜んで付けるくせに、俺がやるかんざしは嬉しくないのか?」とイジワルな聞き方をする。
「そんな事ありません。嬉しいに決まってます!」
流星さんはずるい。ニヤリと笑って、なら素直に貰っておけと言う。そんなこと言われたら断れないじゃないか。
遠慮するのを諦めた私は、どんなのがいい?と聞いてくれる流星さんに、少し思案した後こう答えた。
「碧色のとんぼ玉で出来た物がいいです」
「碧色?」
流星さんの瞳をつい見つめて、その瞳のような綺麗な碧色のとんぼ玉を想像した。
「ふん…碧色ね」
流星さんもじっと見つめ返してくるから、はっと我に返った私はいたたまれなくなった。
「あ、あの、流星さん忘れ物を取りに来たのでは?」
「…ああ、そうだな」
何とか気を逸らそうと忘れ物の事を言うと、じっと見つめていた流星さんは踵を返して書斎へ入って行った。
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