極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
流星さんに着物姿を見てもらって改めてお礼を言おうとそのまま着物を着ていた。
夜、食事の支度も終わった頃、先に帰ってきたのは旦那さまだった。
「おかえりなさいませ」
「うむ、おや、その着物…」
「あ、はい、流星さんが奥様のお着物を貸して頂いて…」
一瞬、奥さまのお着物を借りてることを旦那さまは知らないのかと焦った。
「…ああ、知っている。懐かしいなと思ってな。その着物は妻が気に入っていて良く着ていた」
旦那さまが懐かしそうに目を細めるからホッとした。
その後ろに立ってる女性に気付いて私は目を向ける。清楚なパールグレーのワンピースに身を包んだ彼女は20代後半くらいだろうか、長い黒髪が腰の辺りまであってとても美しい人だ。私のワンピース姿など比べ物にならない程本物のお嬢様に見えた。
「ああ、お客さんだ。丁寧にもてなしてくれ、将来流星の妻になるかもしれないお嬢さんだからな」
「え…」
その言葉に衝撃を受けて私は血の気が引いて固まった。
「新山保奈美と申します。お着物が素敵ね、あなたは?」
「…あ、私は宮部叶と申します。家政婦をしております」
「そう、よろしくね」
「………はっ、はい。どうぞお入りください」
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