極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「お酒をお持ちしました」
「ああ」
書斎に入ると流星さんは本棚の前にいた。
机の上に冷酒セットを置くと所在無さ気にお盆を抱く。
「叶、今日は悪かったな。父が来てから何かと振り回されて大変だろう」
「い、いえ、そんなことは」
いつにもまして気遣ってくれるその言葉に恐れ多くて首を振る。
「大変なことはありません。皆さん優しいですし大家族みたいでとても楽しいです」
「そうか…」
静かにそう言った流星さんは椅子に座り冷酒を注ごうとしたからすかさず私が取ってお酌した。
「ふ…着物姿の叶に酒を注いでもらうなんてなんだか新鮮だな」
「そ、そうですか?このお着物もとても素敵で綺麗な若草色で気に入ってます。あの、流星さんありがとうございます」
「ん?何がだ?」
「このお着物、流星さんが選んでくれたんですよね?紀子さんから聞きました。私てっきり紀子さんが選んだと思ってたから…」
「何だそんな事か、お前はいちいち律儀だな」
大したことではないと流星さんは笑う。
「そんな事ありません。とっても嬉しかったんです。それに仕立て直しもしてくれたとか」
「紀子さんはそんなことも言ったのか。別にわざわざ言うもんでもないだろう」
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