極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「いいえ、言って欲しかったです。じゃないと私のお礼は全然足りません」
「足りない?」
「何度お礼をしてもしきれません。家政婦なのにこんなに良くしてもらって…私を拾ってくれて…今まで、本当に…本当に私を雇ってくれてありがとうございます」
「叶…?」
様子のおかしい私を見上げた流星さんが息を呑むのが分かった。
私は目に涙を溜めながら一生懸命綺麗な青い瞳を見つめた。
この瞳が好きだった。星のように煌めいて強い光は見つめられる度に私の心を射抜いた。
「私、旦那さまの元に行こうと思います。だから、流星さんは安心して奥様を迎えてください」
「何を言っている?結婚などしないと言ってるだろう。叶、父に何か言われたのか?」
鋭くなった視線はそれでも綺麗で目が離せない。
「いいえ、自分で決めました。私がいると奥様になる人はいい気はしないでしょう。家政婦が必要ならもっと年上の人を新しく雇って下さい」
「叶、本気で言ってるのか?お前は俺から離れると?」
「…はい」
「…もういい、下がれ」
私の決意が分かったのか、一瞬顔を歪ませた流星さんは目を逸らし、私は流れる涙そのままに一礼して書斎を出た。

これでいい、これでいいんだ。
流星さんが幸せになるのなら…。

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