極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
「流星の大事にしてる子だから、俺は自分の気持ちを押し殺していた。だが、流星が手放すなら俺はもう遠慮しない。叶ちゃん、俺はずっと叶ちゃんの事が好きだった。どうか俺の嫁さんになってくれないか?」
「え?あの…言ってる意味が…」
「流星の事忘れるくらい俺が愛してやる。俺は絶対こんな凍えさせたりしないよ」
また、がばりと抱きしめられて混乱した。斗真さんが私を好き?そんなのありえない。斗真さんも高級和菓子屋の跡取り息子だ。いずれ流星さんのようにしかるべきお家柄のお嬢様との縁談があって結婚するはず。こんな天涯孤独の身の家政婦が結婚できる相手じゃない。
「じょ、冗談はやめてください。こんな…」
「冗談なんかじゃない。俺は真剣だよ」
押し返そうとしたのに、先ほどとは比べものにならないほど抱きしめる力が強くてどうすることも出来なかった。少し間が空きホッとして顔を上げると間近に斗真さんの顔があって驚く。
胸はドキドキと警鐘を鳴らし危険を知らせる。ゆっくり近づいてくる唇を前に私は横を向いてそれを拒否した。
「……今日はもう帰ろう。ただ、覚えておいて、俺が叶ちゃんにプロポーズしたこと。心の整理が着いた頃に返事をもらうよ」
離れていく斗真さんはため息をついて切なそうな顔をしていた。
私はどう返事をしていいのかわからなくて何も言えなかった。

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