極上御曹司はウブな彼女を独占愛で堕としたい
私にかんざしを贈ってくれる人などこの世に一人しかいない。
「ずるい…流星さん優しすぎます…」
これは流星さんと約束したかんざし。
流星さんの元を離れる私になぜ、内緒で人伝に約束したかんざしを贈って来るのだろう。このかんざしには流星さんの優しさが込められてるようで、その優しさが今の私には痛い。こんなことせずあのまま突き放しておいて欲しかった。
「ごめんね叶ちゃん、流星さんに絶対自分の事は言うなって言われてて…」
茉子ちゃんが申し訳なさそうに真実を教えてくれる。
口止めしたって、このかんざしを見たらすぐにわかるというのに。
「流星さんのバカ…」
胸が痛くて苦しくて、つい流星さんが悪いみたいに言ってしまう。でもそれは、私の独りよがりだってわかってる。流星さんはどこまでも優しい人だ。あの人は私の願いをいつも叶えてくれたじゃないか。なのに私は流星さんに何も返せないまま離れていく。
散々後悔して散々泣いたのに涙は次から次へと溢れて頬を伝いかんざしに落ちていった。
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