あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
「最悪」
連絡先を交換し終えて携帯電話を見ていると緑先輩が突然顔を隠した。
「どうしたんですか?」
緑先輩の視線の先へ私も視線を移す。

そこには心平先輩が研究チームの社員と店内に入ってくる姿が見えた。皆、洗練された印象で雲の上の人のように見える。中にはかなりきれいな女性もいた。高いヒールをかつかつと鳴らす姿が似合う女性は着ている服も持っているバックもブランドものだった。一緒にいる男性の同僚たちも高級なスーツを着こなしている。
「さすが。わが社のエリート中のエリートね。」
緑先輩がメニューで顔を隠しながら私に耳打ちした。

「あの人たちから比べたら営業なんて下々の人間なんでしょうね。」
「・・・」
「自分たちの作ったものを配りに行く駒にしか思えないんじゃないかしら。桐谷さんもそんな人たちに染まるのかな・・・」
緑先輩の言葉は胸に響いた。

心平先輩たちは店内の一番陽の当たる場所で楽しそうに食事を始めた。
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