あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
「研究チームの仕事がひと段落したら一回戻ることになったよ。取引先とも挨拶しないとならないし。俺の営業での仕事を完全に締めないとな」
「・・・」
「そんな顔すんなよ。」
私の書類の山が先輩の机に雪崩を起こして侵入して叱られたことを思い出す。
先輩の机の置いたままのコーヒーカップを何度も片づけたことも。
私が仕事で煮詰まっていると淹れてくれた甘いコーヒーも。
時間になって帰宅する先輩がよく私のパソコンを強制終了した時のことも。

私が感傷的に浸っていると先輩は私の頭を撫でた。
「お前がよく頑張ってること。ちゃんとわかってるよ。」
「データチェックしていたんですか?」
「違うよ。してない。しなくてもわかってる。お前のことだから。」
「・・・」
「急に手放して悪いな。ちゃんと最後まで責任もって育てたかったんだけどさ。途中で離れるようなことになって。」
「先輩のせいじゃありません。」
「・・・でもさ。やっぱり悪いなって思うだろ。」
「先輩。」
「ん?」
先輩が私の方を見る。その目が優しくて私は余計に寂しくなった。
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