あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
「先輩が優しいと調子狂います。」
「何言ってんだよ。いつも優しいだろ?」
「優しくありません。優しいけど。先輩のバカが聞けないと寂しいです。調子狂います。」
「ばか」
先輩が笑いながら私の頭を再び撫でる。
「久しぶりのばかですね。」
「ドМかお前。」
そう言って先輩が笑う。でも私の心は複雑だった。

どんなに仕事をしても。どんなに先輩に追いつこうとしても。先輩の隣を歩けていたような気がしていても。結局先輩は私よりもはるか先を歩いていて、並べて歩いていたのは先輩が私に合わせてくれていただけなのだと思い知っている私にとっては、先輩が今こうして私の頭を撫でながら優しい目をして微笑んでいることが苦しかった。

「ほら。会社で年越したくないだろ?帰ろ。」
「・・・先輩。」
「ん?」
私に上着を着せて、私のバックに机の物を入れながら先輩が私の方を見る。
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