あなたの隣～憧れ先輩と営業外回りペアになりました～
私が先輩に別れを切り出すを、先輩は切なく微笑み返してから小さく何度も頷いた。

やっぱり先輩は私から別れを切り出されることを知っていたらしい。

先輩は私にその理由は聞かなかった。

ただ、別れを切り出した私に何度も小さく頷いてから私の体を抱きしめた。

長く長く、強く強く。

言葉はほとんど交わさないまま、先輩が私と先輩の部屋にたくさん残っていた荷物をアパートへ送り届けてくれた。

先輩は私の荷物を私の部屋まで運ぶのを手伝ってから帰って行った。その時に私が先輩に買ってもらった指輪を外して先輩に返すと、その指輪と交換で先輩はノートを一冊くれた。
営業に配属されてから書いてきた仕事のノート。前に聞いたことのある営業先で出会った人について書かれているノートらしい。

「じゃあな」
「ありがとうございました。」
そんな簡単な挨拶をしてから先輩は振り返ることなくかえって行った。


その後ろ姿を見て、私ははじめて涙が流れた。
それまでこらえていたものが一気にあふれ出した。

先輩の後ろ姿が、いつもは自信にあふれているのに、小さく切なく、儚く見えたから・・・
涙をこらえることができなかった。
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