あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
次の日、田口は身内に不幸ができたと休んだ。
久しぶりに一人で外回りをすることになった私は出社してすぐに準備にかかった。

薬品庫に向かい、自分のカードを使って部屋に入る。
入り口のカゴをふたつ抱えて次々に薬品を入れていく。ほとんどリストの中身は暗記していてどんどんとカゴがいっぱいになっていく。

独りで外回りするときは効率よく回れるように午後の分まで準備するのが私流だ。でも無茶はしない。ちゃんと昼休憩をはさむ。
前は一人で入ることができなかった喫茶店にも、立ち食いそば屋にも、今では入れるようになった。

最後にすべての製品のバーコードを読み取り私は薬品庫を出た。
ここに来るたびに今でも思い出す。

ちらりと薬品庫の手前の階段に視線を向ける。
あの階段から私が警報アラームを鳴らしてしまった時に先輩が走って降りて来た。

今でも鮮明に覚えていて、私は少しだけ、ほんの少しだけ先輩が来てくれたらいいのにと考える。
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