あなたの隣~憧れ先輩と営業外回りペアになりました~
そして、先輩は私の左手の薬指にも指輪をはめた。

大きなダイヤのついた指輪。

「婚約指輪。結婚指輪は一生つけるもんだからさ、さすがに一緒に買いに行きたくて用意してないんだ。」

私は自分の指に輝く指輪を見る。

涙があふれて止まらないのはその指輪がまぶしかったからじゃない。


「知佳」
「はい」
「俺の営業外回りペアから、俺の人生のパートナーになってくれませんか?」
そう言って笑う先輩に私は迷わず答えた。

「喜んで」
笑っている先輩の表情が一瞬引きつる。そして先輩は私を強く抱きしめた。
自分の顔を見られないようにしていることは、私にはお見通しだ。

「泣いてる・・・」
「泣いてない」
「嘘つき」
「ばか」
心地よい先輩の懐かしい言葉を耳元で聴きながら私は瞳を閉じた。
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