君がいれば、楽園

十一月 午前八時のキス

「おはよう、ジェニファー……おはよう、キャサリン。うん? どうした? ちょっと元気がないみたいだな……エリザベス。乾燥は肌に悪いから、ちょっと保湿しておこうか」

 甘い囁きで眠りから浮上したわたしが目にしたのは、長い指で緑の葉を撫でる人。

 彼は、水と愛情を待ちわびている植物たちの間をテキパキと動き回る。

 乾いた土を湿らせ、必要な栄養を与え、枯れた葉っぱを取り除き、日当たりを調整し、と甲斐甲斐しく世話をする。

 見慣れた光景なのに、植物たちを見つめる様子に、やっぱり黙っていられなくなる。

「……冬麻(とうま)

 寝起きの掠れた声で呼びかけると、彼はパッと振り返り、爽やかな笑みを浮かべた。

――はき古したジーンズに、なんの変哲もないグレーのTシャツ。そんな姿にドキドキするのは、寝不足だからだろうか?
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