君がいれば、楽園
「うん。冬麻の作るカレーは、めちゃくちゃ美味しい」

「冬麻さん、料理できるんだ?」

「たぶん……わたしよりもできると思う」

 彼は、わたしの部屋では、豪華な朝食かカレーを作るだけだ。

 でも、その手際の良さから、料理し慣れていることはわかる。
 いつもご飯が炊き上がるのとほぼ同時にカレーが出来上がるし、切ってさえあればいいと思うわたしと違って、素材ごとに火が通りやすい大きさに切り分けている。

 わたしが知らないスパイスの瓶が我が家の冷蔵庫には常備されていて、ベースは市販のカレールウではなく、オリジナルブレンドだ。
 スープカレー、キーマカレーはもちろん、本場インドカレー、スリランカカレーなどそのレパートリーは多国籍。

 朝食のスクランブルエッグの火のとおり加減も絶妙だし、ゆで卵が食べたいと言えば完璧な状態のポーチドエッグが出てくる。やっぱり料理が好きなのだろう。

 わたしが作る料理に、内心うんざりしていたのかもしれない。

「まあ、冬麻さん、職業柄見た目はガテン系だけど姉ちゃんの面倒見るくらいだから、女子力高いだろうね……で、ほかには?」

「…………アレ、が……」

 言いかけて、さすがにこれはマズイだろうと思い、俯く。

 無理して話さなくてもいいとは、けっして言わない弟は、カウンター越しに身を乗り出す。

「アレって、もしかして下ネタ?」

「…………うん」
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