君がいれば、楽園
「……は? プロレス?」

 冬麻に、そんな趣味があるとは知らなかった。

「家に、DVDとかもあるんだけど……女性は、プロレスとか格闘技が嫌いな人も多いし、言う機会もなかったというか。夏加を誘ったことないけれど、コイツとは、生に限らずTVなんかも時々、一緒に観戦してる。最近は、仕事の関係で頻繁に会っていたんだ。前に話したことあっただろ? ジュエリーデザイナーでショップ経営している友人がいるって。それがコイツ。女装が趣味だけど、ストレート。彼女もいる」

 そう言えば……と記憶を手繰り寄せ、秋口に友人が新規出店する店舗のコーディネートを任されたと話していたことを思い出す。

 疑おうと思えば、疑える。
 アキがアキオだなんて、ベタな嘘だと言ってしまうこともできる。

 でも、わたしには、冬麻が嘘を吐いているようには見えなかった。

「今年、いつものようにクリスマスに時間が作れなかったのは、コイツにショップの内装を期間限定でクリスマス仕様にしたいと依頼されたから。二十四日は、二十五日の夜にクリスマスの内装を撤収するための下準備があるし、夏加と一緒に過ごす時はなるべく仕事のことは考えたくないから、予定をずらしてほしかったんだ。でも……さっき、夏加がアイビーだけは特別だって言っているのを聞いて、気づいた。夏加はいままでずっと、二十四日がクリスマスイブだからお祝いしたかったわけじゃないんだよな?」

「うん……」

 頷いたわたしの頭を撫で、冬麻が呟いた。

「よかった。特別な日だと思っていたのは、俺だけじゃなくて」
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