君がいれば、楽園
「要するに……最初から相性がよかったってこと。念のため言っておくけど……葉っぱよりも、愛してる」

 冬麻の顔が近づいてきたかと思うと、唇が重なった。

 優しいキスに、ほっとした。

 ぐずぐずと鼻をすするわたしを抱きかかえ、「やっぱり、夏加はひとりにしておけないな」と言う冬麻は、なぜかわたしの無傷な左手を撫でている。

「明日、病院に付き添うよ。それから…………眠いの? 夏加」

 泣き疲れたせいもあるだろう。傍らに冬麻がいるだけで安心し、猛烈な眠気に襲われた。

 冬麻は、頭をぐらぐらさせているわたしを見て、笑ったようだ。
 頬を寄せた胸から、心地よい振動が伝わってくる。

「今夜にしようかと思っていたんだけど……まあ、いいか。新しい記念日にすれば」

 抱き上げられてベッドへ運ばれ、優しいぬくもりに包まれて……そのあとの記憶はない。
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