君がいれば、楽園

十二月二十五日 午前八時の……

「おはよう、春陽(はるひ)。ごきげんだな? おまえのおかげで、なんとかなったよ。花言葉にふさわしい働きをしてくれて、ありがとう。うん? どっちの意味だって? それは……」

 優しく、甘い声で目が覚めた。

 アイビーに話しかける彼の姿を横目にスマホに手を伸ばす。

 時刻は……午前八時。

 ――会社っ!

 ガバッと起き上がり、ベッドから飛び下りようとして……。

「いーっ!」

 声も出ないほどの痛みで、床にうずくまる。

「夏加っ! 昨夜、捻挫したのを忘れたのか?」

 ――図星だ。

 駆け寄った冬麻に抱き上げられる。

「先に言っておくけど、右の薬指も怪我しているから」

 どうりで、指先の感覚がおかしいはずだ。
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