君がいれば、楽園
 麻酔が切れた途端に襲って来た痛みに、悶絶した。
 タクシーの中でも、病院の待合室でも、号泣だった。
 ずっと付き添ってくれていた冬麻は、さぞかし恥ずかしかったことだろう。

「あー、やっぱ、痛かったです? ですよねぇ。痛み止めのお薬出しておきますからねー」

 夜勤明けのはずだが、相変わらずイケメンの若い医者は、号泣する私に苦笑しながら、経過に問題がなければ一週間後に抜糸すると言い渡した。

 冬麻は、すっかり疲れ果て、抜け殻のようになっているわたしを見て「仕事するのは、無理だ。家で大人しくしていたほうがいい」と言い、課長とカナコに電話してくれた。

『ほんと、夏加といると飽きないわ。指落としかけたって? かぼちゃで? コントじゃないんだから。そう言えば、あんたのところの課長、青くなってたけど自業自得よね。急に辞めちゃった派遣さん、課長の不倫相手だって知ってた? それで、あんたの案件を自分のものにして評価を上げれば、クビを免れることができるかもって思ってるみたい。必死らしいよ。ま、あんたは、冬麻さんと二人で、まったりイチャイチャしてなさい』
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