【女の事件】黒煙のレクイエム
第11話
(フギャーーー!!フギャーーー!!)

義母の赤ちゃんの泣き声がより強烈になっていたので、義母はギンゾウと別れてから8時間後に唐桑半島の先端にある岬に行った。

深夜11時過ぎに、義母は強烈な泣き声をあげている赤ちゃんを海に投げてしまった。

(ドドーン!!ドドーン!!フギャーーー!!フギャーーー!!ドドーン!!フギャーーー!!)

赤ちゃんは、強烈な泣き声をあげながら三陸の海に沈んでしまった。

それからまた9日後のことであった。

学校に行くことができなくなったアタシは、学校から与えられたプリント学習のみで中学校を終わらせることにした。

アタシはこの時、頭痛やはきけなどをひんぱんに起こして、極度の体調不良におちいっていたので、早いうちに病院に入院をしようかと思っていた。

その日の午後2時過ぎのことであった。

アタシは、学校に行って書き上げたプリントを提出して新しいプリントを受け取った後に家に帰った。

家に帰った時であった。

玄関の前でアタシは、市役所の女性職員さんと会った。

女性職員さんは、市役所の児童福祉の部署の担当であった。

女性職員さんはアタシに『今日になって8日前からおたくの家の赤ちゃんが行方不明になっているので、上の職員からの命令で調査をしているのです。』と言うてから、アタシに対して調査に協力をしてほしいと申し出てた。

「だから…協力って…何を協力してほしいとお願いをしているのか…アタシにはさっぱり分からないのです。」
「おじょうちゃん…私たちは…あなたの家のおかあさんの赤ちゃんが8日前から行方不明になっているから、上の職員からの命令で調査をしているのよ…おじょうちゃん…おかあさんと会うことができるかな?」
「あのー…あなたは…義母と会ってなにをしようとしているのでしょうか?」
「私たちは…赤ちゃんを一刻でも早く保護したいのです。」
「赤ちゃんを保護してどのようにしたいと言うのですか!?」
「だから、私たちは上の職員から赤ちゃんを一刻でも早く保護しなさいと言う命令を下されているのです!!」
「上の職員からの命令ですってぇ…」
「おじょうちゃん!!私たちは赤ちゃんを保護することができなかったら、責任を取って違う部署に配置転換されるか、取り引き先の会社に出向になるかもしれないのよ!!」
「何よあんたは一体!!なればいいじゃないのよ!!」
「あのね!!困るのは私たちの方なのよ!!とくに私はね!!シューカツに失敗して、身内のコネでやっと採用をもらったのよ。」
「うるさいわね!!あんたの泣き言なんか聞きたくないわよ!!シューカツに失敗したって言うけど、あんたはコネ使って市役所に入ったのでしょ…言うことがずれているわよ!!あんたが卒業した大学は何の授業をしていたのかしらね!!コンパばかりしていたから、ろくな勉強していなかったのじゃないの?」
「おじょうちゃんね!!そんなことはどーでもいいから行方不明になっている赤ちゃんの調査に協力をしてください!!」
「うるさいわね虫ケラ以下のクソバカコネシュー職員!!帰んなさいよ!!」
「帰んなさいよって…」
「帰んなさいよと言ったら帰んなさいよ!!」
「このままでは帰れないのよ!!」
「だったら、今のうちに辞表を書いて市役所に出しなさいよ!!」
「ちょっと…それってアタシに市役所の仕事をやめろと言いたいわけなのかしら!?」
「ええその通りよ!!あんたみたいに大学に行ってコンパの勉強しかしていない虫ケラ以下のクソバカ職員はね!!市役所で働く資格なんかはないのよ!!市民のために働く資格なんかないのよ!!分かっているのかしら!?」

アタシと女性職員さんがひどい言い合いをしている時に、義母がひょっこりと家に帰ってきた。

女性職員さんは、義母を見つけたとたんに『ちょっと…おかあさま…』と声をかけたので、おどろいた義母はその場から逃げ出した。

「おかあさま!!おかあさま!!待ちなさい!!」

さらにその上に、アタシと女性職員さんのやり取りをギンゾウが聞いていた。

悲しくなったギンゾウは、その日夜7時から深夜11時の間に市内仲町2丁目の酒場街のノミやさんをはしごしてやけ酒をあおって泣き上戸になっていた。

深夜11時10分頃であった。

ギンゾウは、最後にやって来たノミやさんに行きましてあつかんをあおって、カウンターの席でぐでんぐでんになっていた。

店のおかみさんは、怒った口調でギンゾウにこう言うた。

「あんたーね!!もうええかげんにしなさいよ!!なんなのかしらねぇ…大の男がしゅうかしゅうかしゅうか…未練たらしいわね全く!!」
「うるせー…オレはもう…ダメになってしまったのだよ…ダメになってしまったのだよ…」
「なさけないわねあんたは…あんたね!!本当に好きなカノジョのことを思っているのだったら、いさぎよくあきらめなさい!!」
「あきらめてどーせい言うのだよ!?」
「あんたーね!!本気で生きて行きたいのだったら心を入れ替えて、喜多方のラーメン屋さんに戻って大将にあやまってもう一度雇っていただいて…一から仕事を覚えなさい!!アタシもね!!今のお店を持つまでの間に昼夜問わずに一生懸命になって汗水流して働いて来たのよ!!それに引きかえあんたは何なのかしら!!大酒のんでわけのわからないことばかりをグチグチ言ってばかりいるから、後ろ向きになってしまったのよ!!」
「ああそうだよ…オレ…2月28日に大津波警報が出た時(2010年にチリで発生した巨大地震の時に発令された大津波警報の時)に…津波にのみ込まれて海の底に沈んでしまいたかったよぉ…」
「そうね…ギンゾウはまともに生きて行く気持ちがないままだから…津波にのみ込まれて海の底で人生をリセットしないとダメかもしれないわね…あんた…もうすぐ終わりよ…」

ギンゾウは、1万円札を一枚出しておかみさんに渡した後、おつりを受け取らずにそのまま店をあとにした。
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