【女の事件】黒煙のレクイエム
第35話
次の日の朝のことであった。

アタシは、あきよしの家のことが気になっていたので玉野まで行ってみることにした。

とりわけ、ギリギリまで接近して様子を見たらすぐに帰るつもりで玉2丁目の近辺まで行った。

この時であったが、家の近所の人たちがヒソヒソと話し合いをしているのを聞いたので、気になっていた。

アタシはこの時、もう家の近辺は危なくなっていると判断して、急いでJR宇野駅へ引き返そうとしていた。

その時に、近所の奥さまに呼び止められ。

「もしもし…K崎さんの家に行かれるのですか?」
「えっ?」
「K崎さんカタだったら行かない方がいいと思うわよ…危ないから…」
「危ないからって…」
「あんたしらんかったん(知らなかったの)?K崎の長男の嫁がね…男と浮気をしていたみたいよ…その事で家は危なくなっているわよ。」
「てるよしの嫁さんが…男と浮気をしていたって?」
「アタシね…見てしまったのよ…てるよしの嫁が、他の男とラブホに入って行くところをね…場所は知っているからあんたに教えておくわ。」

アタシはこの時、近所の奥さまからJR備前田井駅の裏手にあるラブホにてるよしの嫁さんが他の男と出入りを繰り返していたと言う話を聞いたので、備前田井駅の近くへ行ってみることにした。

ところ変わって、JR備前田井駅の裏手にあるラブホにて…

アタシはこの時、近所の奥さまから聞いた情報をもとにして、てるよしの嫁さんが他の男と出入りを繰り返していたと思われる部屋と車の車種とナンバーを聞いたので、ひと部屋ずつ探していた。

その時に、奥さまが言うてはった浮気相手の男の車が見つかった。

あったわ…

ここにいたのね…

てるよしの嫁さんは…

山口県に逃げて帰ったと思っていたら…

浮気相手の男としけ込んでいたとは…

その時であった。

ガレージの上の階の部屋で、てるよしの嫁さんの叫び声が聞こえた。

「ギャー!!あなたやめて!!死にたくない!!ギャー!!」

続いて、浮気相手の男が泣きそうな声で助けを求めていた。

「たのむ…助けてくれ…命だけは助けてくれ…この通りだ…」
「よくも妻を…ワーッ!!」

この時、てるよしが刃渡りのするどいナイフで浮気相手の男を刺そうとしていた。

「たっ助けてくれ…助けてくれ…死にたくないよ…」

(バターン!!)

この時であったが、部屋のドアが開いてピンク色のバスローブ姿でパンチパーマの男がてるよしに追われて出てきた。

怒り心頭になっていたてるよしは、浮気相手の男を刃物で刺した。

「ワーッ!!ワーッ!!」
「グワーッ!!」

浮気相手の男は、てるよしに刺された後、階段から転げ落ちた。

てるよしはワーッとさけんで飛び降りて、転げ落ちた男を刃物でシツヨウに刺して殺してしまった。

アタシは車の影に隠れて、てるよしが逃げて行くのを待っていた。

てるよしがラブホから逃走してからしばらく時間が経過した時に、アタシは赤茶色のバッグを持ってラブホから逃げ出した。

それから30分後に、岡山県警のパトカーが到着をして現場検証が始まっていた。

てるよしの嫁さんは、部屋の中のベッドにうつ伏せになって亡くなっていた。

浮気相手の男は、即死していた。

事件を起こして逃走をしたてるよしは、一度玉2丁目の家に帰って、両親ときょうだいたちと今後のことにつきまして話をしていた。

その時であったが、岡山県警の捜査員たちがドカドかと足音を立てて家にやって来た。

「K崎てるよし!!田井町のラブホでカップルを刃物で刺して死なせた上に逃走をした事件で逮捕状だ!!」

刑事のひとりが、てるよしに逮捕状を見せた後に『家宅捜索に入りますのでご協力願います。』と言うたので、数十人の捜査員たちがドカドかと足音を立てて家に上がってきた。

家宅捜索開始から5分後に、捜査員のひとりが家の奥の方でひどい異臭がすると言うていたので、十数人の捜査員たちが異臭がする部屋に入った。

そしたら…

腐乱状態で亡くなっていたあきよしの遺体を捜査員が発見したので、家の中で恐ろしいセンリツが走っていた。

「課長!!大変です!!腐食している遺体が見つかりました。」
「損傷が激しい上に…ううっ…においが…きついようです…」

あきよしが腐乱状態で亡くなっているところをケーサツに見つかったので、てるよしとてるよしの両親ときょうだいたちは全員死体遺棄罪で逮捕された。

てるよしはその後、勤めていた製造工場で従業員さんを工場の機械で死なせた事件で再逮捕された他、複数の事件を過去に起こしていたので、今後、再逮捕の件数が追加されて行くのであった。

アタシは、玉2丁目のあきよしの家の1キロ手前にいて、岡山県警の捜査員たちから家宅捜索を受けている様子を冷めた目付きで見つめていた。

アタシは、赤茶色のバッグを持ってとぼとぼと歩きながら小さな声で大沢桃子さんの歌で『恋し浜』を繰り返して歌っていた。

あきよしの家の家族は、全員ケーサツに逮捕されたが、アタシの乳房(むね)の奥にできた深い傷は一生いえることなく痛みつづくのであった。
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