こっちじゃよくあることです。
急いで二階の私の部屋へ移動する。
室内に入ると部屋に置いている私の私物を紙袋などに詰めて行く。何個か紙袋を作るとその袋を持って今住んでいるマンションに転移する。
何度か往復して戻って来た時にスマホが着信を告げた。
「あ……携帯解約するの忘れてた。」
画面を見ると勇樹のお母さんの聡子さんだった。もしかして勇樹から別れたと聞かされたかな?一度深呼吸をしてから通話アイコンをタップした。
「はい、莉奈です。」
『莉奈ちゃん…今どこなの?あのね…。ゆうちゃんがね…。』
聡子さんの魔質がスマホ越しに流れて来る。いつもと違う…。焦りと動揺…。
「勇樹がどうかしたですか?」
『じ…事故で…。』
「…‼」
事故…?
「よ…容態は?」
『意識は戻ったのよ…でもね、…知らない女の子がお見舞いにきていて…ねえ、莉奈ちゃ…別れたの?勇ちゃんと別れ…。ぐっ…ひぅ…。』
聡子さんが電話口で泣き出してしまった。事故…。取り敢えず意識は戻ったってことは交通事故か何かなのか…。
緊張していたのか体の力が抜けて、床に座り込んだ。お見舞いに来ている女の子とはあの浮気相手の女だろう。こういう時、元カレの母親に何て言うべきなんだろう…。
そりゃあ勇樹の容態が心配だ。心配だけれども無事なのは良かったし…。でもやっぱり…ごめん聡子さん。
「聡子さん、私勇樹と別れたの…だからお見舞い行けないよ…ごめんね。」
電話口で泣き続ける聡子さんの声に私もまた鼻の奥がツーーンと痛くなってきた。
私は泣き続ける聡子さんを何とか宥めてから通話を切ると立ち上がった。