こっちじゃよくあることです。
夕方

実家で樫尾のご両親の帰りを待つ。先に帰って来たのはお父さんだった。

「あれ?帰ってたの、どうした~?」

お父さんに軽く事情を説明することにした。

「実は会社を辞めてきて…あ、仕事がいやになったんじゃないんだよ。え~と勇樹と別れまして…傷心のあまり転職しようかと思い立った訳で…。」

お父さんは、ええっ?!と叫び声をあげた。

「高校の時からの彼氏だろ?」

「はぁ…まあ。」

「何が原因だよ?」

お父さん、やけに追及するね。言いづらいよぉ。

「勇樹…さんが、浮気してまして。」

お父さんはガバーッと魔力を上げた。

「いっ今すぐ鴻田君を連れて来い!」

「あ…それは無理。勇樹、今入院してるから。」

「なんだってぇ?!」

これも軽く説明した。お父さんは絶句している。

「勇樹は兎も角…向こうのお母さんと仲いいの…さっき少し病院覗いたら心配になって…。」

お父さんは、そうか…と呟くと何度も頷いた。

「せめてもう少し容態が良くなるまで私も気になるというか…あの、元カレだし高校からの付き合いだし…。」

お父さんは優しい目で私を見ている。また鼻の奥がツーーンと痛くなる。

「やっぱり…まだ好きかな?」

お父さんに頭を撫でられた。

暫くしてお母さんが帰って来た。お父さんと私が事情を説明するとお母さんは病人がなんだ!蹴り上げてやれ!と、お怒りでございました。

久しぶりに親子3人で夕食を取る。

「莉奈もこっちに帰って来るんだろ?」

「うん…あのマンションは引き払ったよ。」

はい、お父様。てか荷物はほとんど捨ててしまって御座いません…。

「まあいいじゃない。莉奈の部屋もあるし、あのまま使いなさいよ。」

はいお母様、そうします…。

私は間抜けにも次の日、また自分の痕跡を復活させる作業を行った。





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