こっちじゃよくあることです。
翌日、銀行口座を再び開設して、携帯電話の料金の引き落とし先の銀行を変更してから勇樹のいる病院に向かった。
今日は聡子さんだけが付き添っていた。聡子さん顔色が悪い。
「あ、莉奈ちゃん…。」
ベッドに近づくと勇樹は起きていた。一瞬私の事を見たが、静かに目を閉じてしまった。はあ…ガン無視ですか…。
聡子さんが外に出る様に私を促した。
充分にICUの病室から距離を取った後、聡子さんは口を開いた。
「朝…先生にも聞いたのだけど勇ちゃん、足が動かないって言ってるのよ…。」
「足…。」
動かないということは…そうか、それで魔力が下半身に流れていなかったのか…だとしたら。
聡子さんはもうすでに真っ青になっている。
「か…下半身の神経を痛めているかも…だってぇ…。」
私はよろめきながら勇樹のベッドに戻って行った。勇樹はこのこと知っているの?
勇樹は目を開けて天井を見ていたが私が近づくとまた寝たふり?をした。
暫く寝たふりをする勇樹の顔を見詰めてみた。
「なにしに…来た。」
か細い声で勇樹がそう言ってきた。はあああ…何だよそれ?心配しちゃいけないのか?
「私はあなたの高校生からの知り合いです。心配してはご迷惑ですか?」
勇樹は目を開いて一度私を見て、また目を閉じた。
「帰れよ。」
酷く…酷く傷ついた。あの浮気現場?の時より傷ついた。彼氏というよりも10代の頃から知っている勇樹と私の仲までもが否定されたようで、悲しかった。
「わ…わかりまし…た。」
完全に泣き声になっていた。涙を零しながら顔を上げると勇樹が目を見開いて私を見ていた。
どうして驚くのよ。私だって否定されたり、嫌われたら悲しいのよ?分かってて振ったんでしょう?
帰ろうと踵を返した時に、ICUの入口に浮気女が立っているのに気が付いた。
「あなた凝りもせずにまた来たの?!厚かましいよっ!元カノのくせにっ。」
そんな大きな声で罵らなくても…もう帰るし…。
「あなたっ莉奈ちゃんは昔から…!」
「うるっさいな!リナリナリナって…おばさんは黙っててよ!」
私の前に走り込んで来た聡子さんに対する言い方に私は切れた。
人生で(異世界を含む)で初めて切れた瞬間だった。