こっちじゃよくあることです。

思いっきり息を吸い込んだ。こんなに怒りや興奮?で体が震えるのは、先日の勇樹と浮気女の2人に遭遇した時以来だ。

思い起こせば異世界で親に捨てられたと気がついた時も、悲しくはあったけど、これほど怒りに感じたことはなかった。

後々考えてみても人生で初めて人前で激昂した瞬間だったかも知れない。

「いい加減にしろよっこのチンチクリン!私は勇樹の元カノである前にズッ友なんだよっ!聡子さんも友達なんだよっ!友達の心配して何が悪いんだよ!大怪我してる勇樹や聡子さんのことを無視出来るほど他人事じゃないんだよ!分かったかっ?これから毎日見舞いに来るからなっ!覚えてろよっ!聡子さんっ。」

「はっはいぃ?!」

私はグルッと聡子さんの顔を顧みた。

「言い過ぎました!頭冷やしてきますっ!」

私はそう言い捨てて、ICUの部屋を飛び出した。ズンズン…と魔王の如く、魔力を最大級に放出しながら廊下を歩いて、カフェスペースに辿り着いて…ゆっくりと椅子に座った。

やってしまった………。

こんなに怒鳴ったのは人生初だ。心の中で罵倒はしてても口に出したことはなかった。

激昂すると魔力を爆発させてしまうかも…とつい、自分でも感情を抑えよう…抑えようと気にしているうちに、感情を表に出さなくなっていた。

自動販売機でホットのココアドリンクを買う。

一口飲むと甘さと一緒にお腹が温かくなる。

言い過ぎた…が後悔はしていない。もう遠慮なんてしてやるもんか。もう彼女でもないし、嫌われたって知るもんか。

カフェスペースで暫く頭を冷した私はICUに戻った。

あれ、浮気女いないね。聡子さんは先生と何か話している。室内には入らないで廊下で待機しようかとしたら、目敏く聡子さんに気づかれて手招きされてしまった。

「莉奈ちゃん…。」

聡子さんは私の手を取ると、先生のほうを見た。

先生は私を見て親戚だと思ったのか、一度頷くと

「息子さんは脊髄を損傷されていて…この先、車椅子での生活になります。」
< 20 / 43 >

この作品をシェア

pagetop