こっちじゃよくあることです。

私は静かに話し出した。

自分が異世界人であること。所謂、魔法使いであること。勇樹の下半身不随を魔法で治してみたいということ。

「但し、デメリットはあるよ。私は異世界人に治療魔術を使うことが初めてで、勇樹の体が治る絶対の保障がないってこと。それに魔力の反動…もしかすると勇樹の命の保障がないかも…しれない。」

私はそこで一旦言葉を切った。勇樹はポカンとしている。勇樹に少し笑ってみせた。

「信じられない?」

「…ああ、お前俺が大変な時に何言ってんの?」

私は自身に遁甲魔法を使った。またお隣の心電図モニターが音をたてた。

「証拠を見せてあげるわ。」

私はチラッと時計の表示を見た。9時過ぎだ…。

またパタパタと看護師さんが隣のベッドの心電図モニターを確認しに来た。そして…

「鴻田さん、開けますね~。」

看護師さんが勇樹のベッドを囲んでいるカーテンをシャッ…と開けて中に入って来た。

「血圧と体温図りますね。」

そういって看護師さんは勇樹の腕に血圧計を巻いている。

「あ、あのそこに…。」

勇樹が私の存在を伝えようと看護師さんに声をかけた時に私はワザと大きな声で答えてあげた。

「無駄よ、勇樹。姿も見えないようにしているし、声も外に聞こえないように魔法を使っているのよ。」

看護師さんは私が座っている椅子の辺りを首を傾げながら見ている。

「ん…鴻田さん…もしかしてあそこに何かいるように見えてる?眩暈はある?吐き気は?」

勇樹…哀れ。頭の心配をされてしまって…まあ笑いごとではないわね。

私は笑いながら立ち上がった。

「私、今日は帰るわ。よく考えてみてね。」

翌日

勇樹を訪ねると不在だった。聡子さんもいない。どうしたのだろうと思ったら30分くらいして戻ってきた勇樹はベッドの上でブスッとしていた。

「幻覚が見えているみたいだって言われて脳のCT取られちゃったよ!お前のせいだ!」

とか怒っていた。

そんなん知らんわ…。


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