こっちじゃよくあることです。
マホ姉さんが勇樹の運命の人なのかもしれない…か。
私はそのまま走り去ろうとするマホ姉さんに向かって、あの…!と声をかけた。
「もし…もし、勇樹の体が元に戻るならまた勇樹と一緒にいてくれますか?」
振り向いたマホ姉さんは顔をしかめた。
「分からないわ…一度、手を振り離しちゃったもの…。」
そう言ってマホ姉さんは走り去った。
私はマホ姉さんの背中に向かって深々と頭を下げた。
ごめんなさい、ごめんなさい。必ず必ず勇樹を元に戻します。そしてあなたの所に返します…だからそれまでは…。
私は病室の勇樹の元へ戻った。
「よおっ、あれ…なんか化粧が濃くない?」
「こらっ!濃いって何だ。コスメカウンターでBAさんにタッチアップ…え~とメイクしてもらったんだよ。完全フル装備だと言え。」
私は敢えてマホ姉さんの話題を振らなかった。勇樹からも振って来なかった。
次の日
朝から携帯にメッセージが入っていた。勇樹だ。
『今日は朝からずっと精密検査でいないから、今日はゆっくりしてくれ。』
「はあ…なるほど。」
すぐに連続してメッセージが来る。どうした?
『莉奈が魔術を使うのに俺が何か準備しなきゃいけないことはあるか?』
読みながらスマホを持つ手が震えた。勇樹…!
『ないよ。ただもう一度治療魔法の説明と守って欲しい決まり事の説明もしたい。』
『了解、検査終わったら連絡する。』
いよいよか…。緊張もしているし、失敗したら…という恐怖感もある。でもそれを上回る、これで勇樹を救うことが出来る…という安堵感の方が大きかった。
今日ほど膨大な魔力持ちで良かったと思ったことはない。あちらの世界でも重度の身体的欠損の再生魔術は最高位難度の医療魔術だ。並みの術者では失敗どころか術者本人が施術中に魔力切れを起こして亡くなってしまいかねない術式だ。
私なら出来る…!大丈夫だ!
私はスマホをギュッと握り締めた。