こっちじゃよくあることです。
…。

……。

………電子音で目が覚めた。眠い…。電子音の発信源のスマホを手で探る。

「はい…。」

『おっせっ!早く出ろよ。』

勇樹だ…。何…?私はまだ頭が回らない。

「あのさ、私明け方まで起きてて…。」

『莉奈…。』

「ん?」

『歩ける、立てるよ。』

勇樹の声に一気に頭が覚醒した。良かった………!私は起き上がった。体がダルい…。何これ。

『朝から先生とか看護師さんとかパニックなってる。今、母さん来るの待ってる。』

「そっか…良かった。本当に良かった。」

『莉奈は今日は来れる?』

正直、体がダルい。起きているのが辛い。

「今日は無理かも〜魔力使い過ぎたから疲れてる。」

『えっ?だ、大丈夫か?』

おかしくなって笑ってしまった。

「病人に大丈夫かって心配されてるよ〜。一眠りしたら行くから…んで、念押しするけど魔法で治ったことは絶対に秘密で。」

「そっか…うん了解。ちょっと聞きたいこともあるし、後で!」

明るい勇樹の声を聞いていると、涙が溢れてきた。私の力が役にたった。

私はそこで意識を手放した。

体を揺すられて目が覚めた。お母さんだ…あれ?

「大丈夫?調子悪いの?」

目を開けると部屋は真っ暗だった。

「もう夕方の6時過ぎ。今日の晩御飯は出前取ろうか?」

ひえっ?!寝過ぎていた。慌てて起き上がると体の怠さはとれていた。

「ゴメンね。」

あたふたとベッドから出るとお母さんは心配そうな顔で私を見ている。

「鴻田君の事で疲れてるんじゃない?」

あ…その心配は一応無くなりました〜、と言うのも変なので、アハハ…と笑って誤魔化した。

出前はお寿司を頼んだ。お父さんが帰って来る前に

「ちょっと、病院に行ってくるね。」

と、出前の寿司を摘まんでから私はそう言って家を出た。

今日はちゃんと病院の玄関から入って行く。

ヒョイ…と病室を覗くと、あ!勇樹のお兄さんの尚輝さんがいる。シンガポールから帰国したんだ。

「りっ!莉奈ちゃん?!」

わわっ!聡子さんが飛び付いてきた。

「勇ちゃん…勇ちゃん足が…足が…。」

聡子さんは慌ててしまって喋れない。ベッドの上に起き上がっている勇樹と目が合った。あれ…?

「莉奈、やっベー。足が動く。朝起きたら治ってた。」

勇樹は嬉しそうに微笑んだ。

うん、打ち合わせ通りの台詞だね。その台詞で誤魔化そー!しかし気になる…勇樹の体の魔力の輝き…あれは…。

私はその後、聡子さんから話を聞きながら驚いたふりをして…そしてちょっぴり泣いた。泣けたのは本当だ。鴻田家全員が大号泣だったためのもらい泣きだった。



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