こっちじゃよくあることです。
朝、目覚めた勇樹は、すぐにナースコールを押して『知らない間に治ってたアピール』を始めたそうだ。

勇樹は骨折もついでに治っていた。このとんでもない奇跡に病院関係者は、朝から精密検査で勇樹を連れ回した。結果は異常なし、脊髄損傷の箇所は認められないとのことだった。その後はひたすら先生達の診察三昧。

その診察中も勇樹はすっとぼけて何とか乗りきったらしい。

シンガポールから緊急帰国してきた尚輝お兄さんは怒っていいのか、喜んでいいのか複雑な表情をずっとしていた。

とりあえず、有給を取って家族を置いて帰国してきたので、折角だから一週間は日本に滞在して帰るようだ。

「にーちゃんにも迷惑かけたな。」

「色んな意味で脅かすな!俺の頭がストレスで禿げたらどうしてくれるんだ!」

と、尚樹お兄さんは帰り際は逆ギレして帰って行った。お兄さんオツカレー。

さて…そろそろ面会も終わる時間だ。ご家族は帰り、今は私と勇樹の2人きりだ。

私は消音魔法をベッド周りに張った。勇樹は空中に視線を向けている。もしかして…?

「勇樹…一つ聞いていい?」

勇樹はゆっくりと私の方を見た。勇樹は目を細めて私を見ている。

「魔力が診えてるの?」

勇樹は一瞬目を見開いた、だが直ぐに鋭い目で私を見た。

「莉奈の周りに一番キラキラしたすごい光の…オーラ?みたいなのが見えている。自分の周りにも結構キラキラ見えている。今日会った人もキラキラが強い人と弱い人とか色々いたけど…あれって魔力の輝き?」

ああ…!どうしよう?!

私は顔を手で覆った。

「ごめん…私のせいだ。勇樹を治す為に魔力を体に入れたことで副作用が出たんだ…。」

「副作用?」

私は顔を上げて勇樹を診た。勇樹の体から上質な高魔力の魔流の流れが診える。

「勇樹は魔術が使えるようになったみたい。」


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