こっちじゃよくあることです。
「魔術が使える?」
勇樹はキョトンとしたままそう呟いた。
ああもうどうしようっ?!勇樹が元気になってくれたのは嬉しい。でも診える目まで使える様になるなんて…。
「本当にごめんっ謝っても許してもらえないと思うけど…魔力が診える目を持ってしまうと一生診えたままだし、魔術も使えるようになる。勇樹を魔術師にするつもりは無くって…。」
「それって、俺も瞬間移動が出来たり、ファイヤボールが打てたり、クエイクが打てたり、メテオを呼べたりするのか?」
う…うん?何だかよく分からないけれど…。
「うん?そうだね…魔術が扱えるようになったから魔力暴走が起こらないように魔術行使の訓練をしないと。」
「魔術の訓練?!」
はああぁ…どうしよう。異世界人の魔術訓練…勿論私が責任を持って勇樹に指導しなければいけないけど勇樹に拒否されたらな…。
本当は勇樹の体を治したらすぐに元の世界に戻るつもりだったけど…。
「やるっ!」
「っへ?」
「魔術修行します!師匠!」
「ししょー?」
勇樹がキラキラした目で突然立ち上がった。立ち上がったーー勇樹が立った!
ああっ良かったっ…問題なく立ててるよ…良かった。
「じゃあ早速莉奈に弟子入りだな!取り敢えず師匠と弟子は同じ釜の飯を食わなきゃな!」
「っへ?」
翌日
経過観察をさせて欲しいという病院の先生達を振り切って勇樹は強引に退院してきていた。何故だか私は勇樹のマンションで勇樹と向かい合って日本茶を飲んでいる。
「実家に帰らないの?」
「母さん達が居るのに魔術の練習出来ないだろ?」
「まあそれはそうだけど…。」
「明日から職場復帰するって本当?」
「本当。仕事しないと生活出来ないだろ?」
「まあそうだけど…。」
先ほど、勇樹は樫尾のご両親に頭を下げて
「本調子じゃない俺の生活のサポートをお願いしています!お嬢さんを連れて行きます!」
とか一見すると格好いい台詞に思えるが実は意味不明な発言である言葉を堂々と言い切り、私の荷物と共に自分のマンションに私を連れて戻って来ていた。
正直困っている。だって私は元カノだし、マホ姉さんが今カノでしょう?
何だかその話題を出そうとすると、勇樹からとんでもない魔力圧をかけられているのだ。そんなに魔力を自在に操れるなら私のサポートなんていらないんじゃない?
本当に困っている。