こっちじゃよくあることです。
トマトサラダのモッツァレラチーズのせと和風キノコパスタを作って、リビングに居る勇樹に声をかけた。

「はい、お昼。」

「ん~ありがと。」

さっきから熱心に何をしているんだろう?と思って手元を見たら、回復魔法の魔術印の複写を描いている。本当に真面目だな。

「いやさ~よく考えたらこれに魔力を入れたらすぐ発動するわけだろ?この紙をクリアファイルに持って行っておけば、外回りとかで疲れた時に俺以外の人も触れれば回復出来るだろ?」

その発想はなかった。自分以外の人を回復させる。そうか、あちらの世界は魔力が使えない人はいない。自分で疲れたら自身に回復魔法使う。魔術印も自分で描かなくても店で売っている。

「勇樹はイメージで魔法を発動出来るかな?」

勇樹はモグモグとサラダを食べながら、ん?と首を傾げている。

「魔術印を描いて発動するのは媒体として紙が必要でしょ?頭の中で…う~ん…イメージで、こんな感じで…どう?」

私は指先に炎を出してみた。ちょうどピストルみたいに勇樹にバーンと言いながら向けてみた。

「イメージ出してみる?」

勇樹はパスタをモグモグ食べながら「メテオ呼んじゃうと地球が…。」とか何かブツブツ呟いていたがパッと手を前に出した。

「出でよ!〇メガウエポン!」

と叫んだ。へ…部屋の中にとんでもない魔圧が感じられる!私は慌てて部屋全体に魔物理防御障壁を三重掛けにした。

勇樹の差し出した掌から亜空間が見えて、そちらから何かがこちらに出て来ようとしているのが分かる。

その掌の空間の中から大きな爬虫類の目がこちらを覗き込んでギロリと私を睨んだ。

「ぎゃあああ!」

私は腰が抜けた…。

「わあっ?!ゴ…ゴメン?〇メガウエポンはこんな狭い所で呼んじゃいけなかった?」

「しょ…しょ…召喚魔法なんて100万年早いわっ‼おまけにそんな中二病臭い生き物…危険すぎます!」

腰が抜けていて生まれたての小鹿みたいにブルブル震えている今の状態で怒っても迫力はないけれど、勇樹はごめんなさい…としょんぼりしながら亜空間を静かに閉じた。

やだちょっと…勇樹ってとんでもない馬鹿だけど、もしかして魔術の才能がすごいんじゃないかな…。



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