こっちじゃよくあることです。
私はいつかこの檻(魔術師団の寮)から外に出ることを考えていた。ただ外に出るだけでは見つかれば連れ戻されてしまう。完全に見つからない場所へ逃げよう。
どこがいいか…毎日図書館で本を読み漁った。
そして見つけた『異世界』だ。
そこなら相当の術者でなければ追いかけては来れない。恐らくこの国の術者では無理だ。では私を捜しにわざわざ高位魔法の『界渡り』が出来る術者に私の捜索を頼むか?
いや…そんな労力とか金をかけてまで私を捜しはしない。暫くは騒ぐだろうが、そのうち諦めるだろう…。
私はそう踏んで、コツコツと『界渡り』の高位魔法を会得するために日々鍛錬と研究に没頭した。
そして14歳になった時、ついに『界渡り』魔術を会得した私は異世界に向けて家出を敢行した。
辿り着いた異世界は想像していたのとは全然違った。
魔法の無い世界。電気や電車、飛行機…。全てが今までいた世界とはまるで違っていた。
私は時間をかけてこの世界を調べ…そして魔法を使い、子供のいないご夫婦の子供として何食わぬ顔で今年高校生になる、樫尾莉奈としての生活を始めたのだった。
幸せだった。初めて幸せだと感じることが出来た。優しい偽の両親、楽しい学校生活。そんな高校生の時に鴻田 勇樹にあった。
勇樹は同じクラスの同級生だった。教室の席が隣だったのだ。自然と話すようになった。好きだと言われ人生(異世界を含む)で初めて出来た彼氏だった。