こっちじゃよくあることです。
「おかえりなさいませ、莉奈。」

「お、おうっ。」

変な返事を返してから私は恐々玄関の中に入った。束縛系の魔術の…気配は無い。

勇樹と食べる晩御飯も同じく鍋だ。いちいち材料を変えていては時間もかかるし手間だ。

「今日は鳥つみれのみぞれ鍋だよ。」

「ありがとうございます。」

何だろう、玄関口から早く退け!恐ろしくて近づけないだろう!

「話がある。」

「はあ…。」

「取り敢えずご飯食べよう。」

「はぁ…。」

私はそう言って立ち上がってリビングに行った勇樹の後ろをすり抜けてキッチンに入ると、鍋をリビングの上の卓上コンロの上に置いた。

ビールと枝豆、棒棒鶏をおつまみに…勇樹の座ったテーブルの前に置いた。

「ありがとう。」

「どういたしまして。」

妙な緊張感が魔力に乗せて勇樹から伝わってくる。魔質は高揚と緊張と不安?が診える。

はっ!まさかメテオとやらを呼んだ?のではないか?!

思わずびびってどこからメテオの攻撃が来るのか…とキョロキョロと辺りを見た。

「福井満穂さんとの関係は終わりました。」

「‼」

メテオ…ではないけどびっくりしてちょっと飛び上がってしまった。そう言った勇樹を見ると真剣な顔をして私を見ている。

「勝手なことを言っているのは分かっている。昼間にも言ったけど、今の莉奈との幸せな時間を壊したくない。このままずっと一緒に居たい。」

嬉しい反面、また困っている自分がいる。ヤンデレ疑惑のある勇樹に話すのは怖いけど言うなら今しかない。

「それは…違うよ。」

勇樹のヤンデレ魔力がブワッと膨れ上がった。こわっ…。

「何が違うんだよ?」

ヤンデレを刺激しないように言葉を慎重に選びながら自分の気持ちを話す。

「私が異世界からこちらに来たことで…本来会うはずない勇樹と会ったことになるよね?だから勇樹には本当の伴侶とか恋人とかいるんじゃないかと思う。」

「……。」

ああ…無言もまた怖い…。メテオに備えて何か対抗策をしておかないと…。


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