こっちじゃよくあることです。
既読の文字が表示された途端、スマホの画面越しに勇樹の魔力が流れてきたからだ。
あいつ…泣いているのか?
そんな魔力波形だった。泣きたいのはこっちじゃボケーーっ‼
先に泣かれるとこちらは冷めてしまった。何故フッておいて泣くのだ?俺、可哀そうアピールか?
そう思うと悲しみより怒りの方の比重が大きくなってきた。
私は涙を拭きとると、化粧直しをしてトイレから出た。やることは一杯ある。
トイレから戻ると呉川さんと山田先輩と視線が合わさった。どうだった?と聞かれる前に自分から行ってみた。
「はは…ダメでしたわ。」
それだけで、お2人には通じてしまったみたいだ。
「今週末に飲みに行こう!」
「そ、そうだね!俺も付き合うよ。」
ふえ~~~ん。心の中で号泣しつつ先輩方に頭を下げる。
「はい…宜しくお願いします。」
私は引継ぎ作業用の資料を作りつつ、今残っている仕事を片付け始めた。
週の真ん中の水曜日
いつもと同じ時間に家を出た。
ああ、しまった。駅に向かっている時に気が付いた。勇樹が前の方を歩いている。これ魔力波形が見える、感じるってある意味便利だよね。不意打ちで会うことも、わざと避けることも可能だ。
勇樹の魔力波形を遠くから観察する。
ふーーん結構元気じゃない。そりゃそうか、私とは綺麗に別れられたし…いや、何を持って綺麗な別れと言うのかは謎だけど。そもそも別れに綺麗なんてものはなくてだね、よく考えれば醜悪とも取れる感情を…。
とか考え込んでいる間に、おっといけない!勇樹に近づき過ぎていた。
人混みの間に勇樹のスーツ姿が見える。確かにヒョロッとしているかな…。また鼻の奥がツーンと痛み出した。
よしっ…思い切って歩調を速めて勇樹の側を歩いて抜き去った。