Ⓒランページ
12、人はいつだって簡単だ。
キミは目を覚ますと、大きな城の前にいた。辺りは暗く、小太りな三日月が出ている。
その三日月にもたれかかった黒猫は、キミに気づくとギターを置いてふわりと降り立つ。
「あら、今日はまた随分と粧し込んでいるのね」
黒猫にそう言われたキミは怪訝そうな表情をし、自分の服装を確認した。赤いドレスを身に纏っており、キミは「ああ、そうだった」。思い出す。
「今日は舞踏会なの」
「舞踏会? 一体誰の?」
「わからないの」
「わからないのに、舞踏会?」
「うん。わからないのに、舞踏会なの」
黒猫は「へえ、そう」と言って、クスクスと笑った。
「どうして笑うの?」
「あら、ごめんなさいね。でもあまりにもおかしくて、ふふっ」
「私、変かな?」
「いいえ、あなたはとっても素敵よ? 私が笑ったのは、そこじゃないの」
「じゃあ、どこなの?」