Ⓒランページ
「確かに当初の目的では、あの男を使って、あの子を東京の僕の家に呼び寄せて、それから復讐してやるつもりだった。そのために、昨夜、あの子の脳内からあの男の記憶を消そうとした。でもできなかった。彼女はもうあの男に会ってしまったんだよ。夢の中でね。夢は意識だよ。それはもちろん、アリス。キミも十分知っていると思う」
「ええ、そうね。現に私は死んでいる。死んでいるはずなのに、意識はケン。あなたと共にある。不吉な色した猫としてね」
「そう。さっきも言った通り夢は意識なんだ。いくら僕がいじったところで、意識には勝てない。あの子のあの男を想う気持ちが僕たちの想像以上に強かったんだ」
「だとしたら、縛り付けてでもあの男に会わせるべきじゃなかった。そうでしょ?」
「確かにそうかもしれないね。でも僕はひらめいてしまったんだよ。とんでもない名案さ。我ながら冴えているとも言えるし、逆に冴えてないとも言える。なんでこんな簡単なことにもっと早くから気づけなかったんだろうってね」
「その名案ってやつは一体何なの?」
「アリスと同じ目に遭わせてやればいいんだよ」
「私と同じ目に? それはつまり……。いやいや、そんなことできるわけない!」
「できたんだよ、アリス。できたんだ。昔ホムンクルスに関する本を読んだことがあってね、そこには人間の作り方が書いてあった。錬金術。錬金術なんだよ」
「それは知ってるわ。ホムンクルスは人体錬成をした錬金術師だってことくらい。そんなことも知らないくらい私はバカじゃない」
「ならなぜわからないんだい? 僕が脳内で人体錬成をできたってことがさ」