Ⓒランページ
タチの悪い病気に罹った僕は、入院先の病院でアリスと出会った。
アリスは友達のお見舞いで、よく僕の入院している病院に来ていて、談話室でいつも本を読んで時間を潰していた。
僕も同じように談話室で本を読んでいた。それくらいしかやることがなかったんだよ。
そんな二人だから、趣味の話で仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
連絡先を交換し、退院してから僕たちは結婚した。もちろん、お互い家族には反対された。でも家同士の結婚なんて古いと思っていた僕たちは、逃げるようにして大阪に行った。そこで小さなアパートを借り、アリスは地元の中学校で家庭科の非常勤講師として働き、僕はネットで占い師としてお金を稼いだ。
占いは僕の性に合っていた。文字だけのやりとりで相談者がどういう人で、どういう暮らしをしていて、どういう過去があって、どういうことを考えているか、手に取るようにわかったし、その人の未来までも見えていた。
ここでキミは、「どうしてアリスがこうなる未来を予知できなかったの?」と思ったかもしれない。見ようとすれば見えるし、見ようとしなければ見えないと答えたらわかってもらえるだろうか?
僕はあえて見ないようにしたんだよ。僕たちの未来のことを。当然アリスの未来も見ないようにロックをかけた。先が見える未来ほどつまらないものはないからね。
今思うとそれが仇となったわけだ。見ようとすれば見えたはずなのに、皮肉なものだと思わないかい?