Ⓒランページ
「もしかして、あなたはミケちゃん?」
キミがそう叫ぶと、黒猫はギターを横に置きながら、「違う」と言った。
「私は黒猫よ? 三毛猫じゃない」
「でも海外ではあえて反対の意味を持つ名前を付けるじゃない。陰陽のバランスみたいにさ」
「確かにそれはあるわね。でも私はそうじゃない」
キミは伸ばしていた手をだらりと降ろして、その場にしゃがみ込んだ。
「どうしたの?」と黒猫が聞いた。
「おなかが痛いの」
「それは良くないわね」と黒猫が三日月を蹴って、ふわりとキミの元へ降り立った。
「歯医者に行ったほうがいいわ」
「どうして歯医者なの? 私は歯じゃなくておなかが痛いのよ?」
「悪いところの原因が必ずしもそことは限らないでしょう? 例えばあなたは彼氏ができないことを自分の顔や性格のせいだと考えている」
「うん、そうよ。だって私、顔も性格も良くないもの。そんな私のことを好きになってくれる人なんている?」